消費税ってどんな税ー輸出還付

身近なようで、意外と知られていないのが、消費税。議論の前に、まず正確に知って欲しいというのが、私の願いです。

輸出すると消費税は還付になる?

テレビドラマで「金のインゴットを輸出すると税金が還付になる」と説明するシーンがありましが、間違っていました。輸出で還付になることがあるのは事実ですが、還付になるのは「輸出したから」ではなく消費税法か輸出を免税としているからであり、仕入税額控除という制度があるからです。

 

消費税法の輸出の取扱い

消費税法第7条では「事業者(免税事業者を除く)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものについては、消費税を免除する。」とし「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」あげています。これが典型的な輸出です。輸出は免税で、ゼロ税率といわれることがあります。非課税ではありません。

ではなぜこの規定が還付と関係するのでしょうか。
事業者は、一定期間分の売上の消費税相当額を集計し(課税標準額に対する消費税額といいます)、ここから仕入分の消費税相当額(課税仕入れに対する消費税額といいます)を差し引きして納付税額を算出します。
輸出の場合、免税(税率がゼロ)なので売上があっても、消費税はゼロですから、輸出が多ければ、(売上消費税-仕入消費税)の計算結果はマイナスとなり、作成する申告書は還付申告書となります。一定期間(課税期間)をまとめて集計するので、輸出があってもその他の課税売上があれば還付になるとは限りません。

還付申告はどのくらいあるか

2020年の税務統計では、消費税の還付申告は、法人18万、個人6万件ほどです。還付税額は法人で4兆8千億円となっています。法人1社あたりでは、2700万円となります。もちろん、この全てが、輸出企業ではありませんが、消費税の納税申告の総額が19兆であることから、結構大きいなと感じます。

輸出還付をめぐって

消費税法が輸出を免税にしていることについて賛否両論があります。この制度は大企業優遇であり、一種の輸出奨励金であるという意見があり、これに対する反論として、仕入段階の消費税が還付されるのだから当たり前で、大企業優遇税制とはいえない、といいます。

この点については、別稿でふれたいと思います。

消費税ってどんな税-消費税には2種ある-

あまり知られていませんが、税関で納付される消費税もあります。

 

選挙のたびに争点となる消費税。しかし、身近なようで、意外と知られていないのが、消費税。議論の前に、まず正確に知って欲しいというのが、私の願いです。

消費税というと、誰もがレシートに記載された「税」を思い浮かべます。ところが、これ以外にも「税関」(税務署でなく)に納付される消費税があることは、意外と知られていません。

直近の税務統計(令和2年度)では、税関分の消費税申告件数は、1578万件で、税額は、5兆4664億円です。税務署分の税額が、19兆1719億円で、ここから還付分を差し引くと、14兆2621億円です。消費税総額のうち、およそ28%が、税関扱いということになります。けっこう多いなと感じませんか。食料品や身近なものの多くが輸入品なんですね。

輸入貨物を引き取る者は納税義務がある

消費税法では課税資産の譲渡等を行う事業者以外にも、モノを輸入する人にも納税義務があると規定しています。

消費税法5条2項「外国貨物を保税地域から引き取る者は、この法律により消費税を納める義務がある。」

保税地域とは、輸入許可が下りる前の輸入貨物の置き場のことで、コンテナヤードなどとも呼ぶようです。要するにモノを輸入する人は、消費税の納税義務があり、税関に申告し、消費税を納付しなければ、モノを引き取ることができません。

ここで注意すべきは、5条1項の納税義務者(資産の譲渡等を行う事業者)と違い「事業者」に限定されません。また消費税の算出根拠となる金額(課税標準額)は、関税定率法の課税価格に準じて算出されます。したがって、タダのものであっても、自社の海外支店から持ち込んだものであっても課税されます。

税関で払った消費税は、消費税申告時に控除される

普通の輸入業者であれば、売るために輸入するのですから、税務署に消費税を申告するときに、「仕入税額控除」として、控除されます。したがって、税関支払い分は、仮払いのような性格であるともいえます。

それでも税の性格が違う

国内で事業者が、モノやサービスを販売したときにかかる消費税(普通の消費税)と、輸入申告でかかる消費税は、どちらも「消費税法」に規定されている「消費税」ですが、税金としての性格は全く違います。後者は輸入関税と同様な性格をもっています。しかし、同一の消費税とされることから、輸入業者の消費税申告時に「仕入税額」として控除されます。仮に別個の税として扱われると、輸入業者は、コストとして、販売価格に転嫁することになります。うまい仕組みを考えたものと思います。しかし、税としての性格は全く違います。