決算書は社長にとって役に立っているか

これから書くことは「暴論」です。しかし私が日頃感じている本音でもあります。法人税の申告のためには決算書が必要です。決算書は「財務諸表」とも呼ばれますが、貸借対照表と損益計算書のことです。キャシュ・フロー計算書も決算書の一部ですが、小さな会社には作成が義務づけられておらず、税務署にも提出しません。

決算書がないと法人税の申告ができないので、決算書は税理士の飯の種でもあります。決算書は会社の財政状態(貸借対照表)や、一事業年度の営業成績を表すもの(損益計算書)といわれています。別の言い方をすれば、会社の状態や営業成績のレポート(報告書)です。しかし、この「報告書」は、社長さんにとって、わかりやすく、役立つものになっているのだろうか。これが私の疑問です。

報告の相手は誰か

「会計」Accountingには、もともと「報告」という意味があるそうですが、報告の相手は、誰でしょうか。個人の「青色決算書」の報告の相手は明確です。所得税の課税対象である所得の計算を目的としていますから、間違いなく報告の相手は税務署です。

会社の場合はどうでしょうか。会社は決算書の作成が法令で義務づけられており、報告の相手は、会社の利害関係(株主や債権者)です。法人税の課税所得の計算も決算書を基礎として計算するよう定められていますから、税務署も報告の相手ということになります。

決算書は社長向けに作られていない

決算書の形式や基準がまちまちでは、報告を受ける側は比較ができませんから、「会社計算規則」に従って、決算書は作成されています。
私の暴論はここからです。
貸借対照表は決算日の財政状態を表しているものとされます。しかし貸借対照表の「資産」の部に計上されているものは「財産」assetとイコールではありません。店舗の横の空きスペースに駐車場として舗装工事をしたとします。これは、れっきとした経費ですが、会計では「資産」として処理します。明らかに経費なのに、「固定資産」として処理され損益計算書では経費とされません。このルールで作られた損益計算書の利益は、社長の考える利益と一致しているのでしょうか。

前年度に新たに札幌に営業所を開設したとします。さいわい今のところ売上は順調なようですが、最初にかかった費用(事務所費や備品、車両取得費など)は、回収できたといえるのでしょうか。決算書のどこをみても、答えはありません。

損益計算書は、売上から始まって、仕入や人件費、経費を差し引きして最後に利益を計算します。私を含め税理士は、この構造に何ら疑問を持ちません。しかし、実際の事業(経営)は、売上からスタートするわけではありません。まず、仕入、人件費や経費の支払いなどから始まって、売上という形で回収することによって一巡します。決算書が社長向けのレポートだとすれば、まず使ったお金がわかり、これに対して売上として戻ってきたお金がいくらかが、計算される形式であるべきではないでしょうか。

以上は、ほんの一例ですが、決算書がレポートとして重要なことはいうまでもないのですが、社長向けのレポートとしては、十分ではないのです。その理由は明確であって、もともと決算書は、外部に報告する目的のものだからです。

会計ソフトの活用と課題

会計ソフトは会計帳簿と決算書の作成を出口としています。このために、全てのお金の出入りや、債権、債務の発生が記録されています。この記録をうまく生かすことができれば、目的にあったレポートを作ることができそうです。

過去1年分の損益計算書をみたいと思っても、事業年度をまたいだ集計表はみることができません。事業年度、決算というワクは、あくまで、人為的なものであり、事業は連続しています。これはほんの一例にすぎません。先に例としてあげた、社長が必要とするレポートも会計ソフトのデータを活用すれば作成できるはずです。会計ソフトは、決算書をつくるということを目的とするあまり自縛状態に陥っていると思うのです。

私たち税理士も同じあり、決算書を説明することも大事ですが、社長が求めるレポートとは、どんなものか考えてみる必要があると考えています。