医療費控除は必要か

「給付」と受けとめられている医療費控除

医療費控除について解説するサイト見ると、「医療費控除の申請の仕方」などとなっているものも多い。この制度の受け止めは多くの人にとって「給付」である。

医療費20万、年収1千万で還付2万円、5百万で1万円

医療費控除が、給付であるとすれば、税法に組み込むことによって、必然的に低所得者に薄く、高額所得者に厚いという結果を招く。
医療費控除は、所得控除なので、年間20万円の医療費を支出したとしても、年収1千万円の人は、2万円の還付となり、500万円の人は、1万円円の還付となる。年収120万円の人は還付がない。
※いずれも給与収入で、扶養なし、社会保険は14%とした。

高額所得者のほうが、還付が多いことに、多くの人は、違和感を覚えるのではないか。それとも、沢山税金を払っているご褒美だから、当然と感じるのだろうか。
違和感を覚える人は、医療費控除を医療費助成の一種と思っているし、当然と思う人は、国からのお小遣い程度の受け止めなのだろうか。

医療費控除本来の趣旨

シャウプ勧告によれば「医療費が甚だしく多い場合(大手術、長期入院、結核療養など)税金の支払能力に相当な支障をきたす。このような場合、適当な控除が与えられるべきである」とし「所得の10%を超える場合控除を認めるという原則を適用すればよい」としている。
税法に組み込まれた医療費控除の趣旨は、傷病により、税金支払い能力に支障をきたすと思われる場合の納税緩和措置である。

医療費控除の適用実態

令和3年税務統計よると、所得1千万以下の給与所得者で、医療費控除の申告者は、46万人ほどであり、控除額の平均は一人あたりおよそ16万円である。この所得階層の税率は、5%から20%なので、8千円から3万2千円程度の還付額となる。この金額の受け止めは、各人各様であろう。

無視される事務コスト

前記統計によれば、給与所得者で、所得1千万以下の医療費控除適用者は、46万人である。この大多数は、医療費控除がなければ確定申告をしない人である。
申告がなされると、課税庁は、申告書を受理し、検算し還付しなければならない。国税庁確定申告サイトの利用者は、増加していると思われるが、自分で申告書を作成できない人も多い。税理士であったときの経験では、税理士会の無料還付相談会は、大変な人出である。

医療費控除制度に関する事務コストが、どのくらいになるのか、わからないが、相当の金額になるはずであり、社会的リソースの無駄遣いである。

医療費控除は、制度本来の趣旨である「税金支払い能力に支障をきたす場合」のための所得控除と位置づけシャウプ勧告のいうところの「所得の10%を超える場合」程度に限定されるべきであろう。制度を医療費助成(給付)と位置づけるならば、社会保障制度に組み込むべきである。